お薦めの一冊 その2~広瀬隆『原発処分 先進国ドイツの現実』(五月書房・1,300円+税)
- 2014/12/30
- 21:45
2013年3月に著者らが出向いた、ドイツ
原発取材旅行の記録。福島第1原発事故後に
全原発の閉鎖を決めたドイツは、本当に原発
ゼロ政策の“夢の国”なのか--本書を読むと、
大きな矛盾を抱えていることがわかる。
高い放射線量、不透明な廃炉廃棄物の搬出先
メルケル首相は「3・11」のあと、17基の
原発のうち老朽化した7基を廃炉にすることを
決めた。
著者らはまず、運転終了から四半世紀たった
グライフスヴァルト原発を見学。案内されたの
は、解体された圧力容器や蒸気発生器などが並
ぶ中間貯蔵施設だった。
解体廃棄物から2m離れた通路を歩かされた。
放射線量は50マイクロシーベルト/時と高い。
廃炉作業はまだ終わらない。
2カ所目は、オブリッヒハイム原発の廃炉現場。
「原発を運転してきた技術者が存在するうちに解
体しなければならない」
という担当者の説明を、広瀬さんは「賢明なもの」
と評価する。
しかし、廃炉作業で発生するゴミのうち、放射
性廃棄物扱いされるのは1%にすぎない。残り99
%は、一般の産業廃棄物としてフライパンや椅子
のフレーム、食器などに化け、日常生活に放射能
が侵入してくる、という。
“核のゴミ”の搬出先は、政策的には決まってい
るが、実態は未定。反対運動が強く、宙に浮いて
いるところもある。
手が付けられないアッセの最終処分場
3カ所の最終処分場(候補地を含む)で目にした
のは、“地底の核ゴミ地獄”だった。
高レベル放射性廃棄物の処分場候補地になった
ゴアレーベン(その後、計画は白紙に戻る)。掘削
された地下840mの水平坑道は、地下水やガス、
石油が出てくる場所。放射能の封じ込めに有力と
された岩塩層には、上部の地層につながる亀裂も
あった。
中・低レベル廃棄物の処分場は、鉄鉱山の跡地・
コンラートと、岩塩坑の跡地・アッセの2カ所に
ある。
60年代から70年代にかけて、アッセでは地下
850mの坑道に“核のゴミ”ドラム缶を投げ込んだ。
10年ほど前、大量の地下水が侵入し、汚染が拡大。
投棄場所は撮影禁止と指示された。
「福島第1原発事故現場とほとんど同じ、手の付
けられない状態なのである!ここは『夢の国』ド
イツではなかった」
「高レベル廃棄物の処分は人間には不可能」
ドイツの“核のゴミ”事情を踏まえ、著者は日本
の地層処分政策をこう指弾する。
「(数億年から数10億年にわたり)まったく動かな
い(欧米の)大陸と、今も動いている狭い島を比べ
て、地層処分の比較をすることはナンセンス」
本書の最大テーマは「高レベル廃棄物の処分は
人間には不可能」という結論にある。
日本の地層処分場は決まっておらず、著者は
「今後も絶対に決定しない」と断言する。
「あとがき」の一節を紹介しておきたい。
「日本政府は、大量発生する『行方の決まらない
使用済み核燃料および高レベル放射性廃棄物』の
最終処分場の地名を答えずに、どのような理由か
ら原発再稼働を認めるのか、その具体的理由をま
ったく答えていない。
国民と報道機関は、自分の生命と生活を守るた
めに、政府に対してこの問題を追及するべきなの
だ。…(略)…この問題に敵と味方はない。原子
力を放棄する決断が迫られている」
(滝川 康治)
(写真)アッセの“核のゴミ”投棄現場
(本書132~133ページ)
原発取材旅行の記録。福島第1原発事故後に
全原発の閉鎖を決めたドイツは、本当に原発
ゼロ政策の“夢の国”なのか--本書を読むと、
大きな矛盾を抱えていることがわかる。
高い放射線量、不透明な廃炉廃棄物の搬出先
メルケル首相は「3・11」のあと、17基の
原発のうち老朽化した7基を廃炉にすることを
決めた。
著者らはまず、運転終了から四半世紀たった
グライフスヴァルト原発を見学。案内されたの
は、解体された圧力容器や蒸気発生器などが並
ぶ中間貯蔵施設だった。
解体廃棄物から2m離れた通路を歩かされた。
放射線量は50マイクロシーベルト/時と高い。
廃炉作業はまだ終わらない。
2カ所目は、オブリッヒハイム原発の廃炉現場。
「原発を運転してきた技術者が存在するうちに解
体しなければならない」
という担当者の説明を、広瀬さんは「賢明なもの」
と評価する。
しかし、廃炉作業で発生するゴミのうち、放射
性廃棄物扱いされるのは1%にすぎない。残り99
%は、一般の産業廃棄物としてフライパンや椅子
のフレーム、食器などに化け、日常生活に放射能
が侵入してくる、という。
“核のゴミ”の搬出先は、政策的には決まってい
るが、実態は未定。反対運動が強く、宙に浮いて
いるところもある。
手が付けられないアッセの最終処分場
3カ所の最終処分場(候補地を含む)で目にした
のは、“地底の核ゴミ地獄”だった。
高レベル放射性廃棄物の処分場候補地になった
ゴアレーベン(その後、計画は白紙に戻る)。掘削
された地下840mの水平坑道は、地下水やガス、
石油が出てくる場所。放射能の封じ込めに有力と
された岩塩層には、上部の地層につながる亀裂も
あった。
中・低レベル廃棄物の処分場は、鉄鉱山の跡地・
コンラートと、岩塩坑の跡地・アッセの2カ所に
ある。
60年代から70年代にかけて、アッセでは地下
850mの坑道に“核のゴミ”ドラム缶を投げ込んだ。
10年ほど前、大量の地下水が侵入し、汚染が拡大。
投棄場所は撮影禁止と指示された。
「福島第1原発事故現場とほとんど同じ、手の付
けられない状態なのである!ここは『夢の国』ド
イツではなかった」
「高レベル廃棄物の処分は人間には不可能」
ドイツの“核のゴミ”事情を踏まえ、著者は日本
の地層処分政策をこう指弾する。
「(数億年から数10億年にわたり)まったく動かな
い(欧米の)大陸と、今も動いている狭い島を比べ
て、地層処分の比較をすることはナンセンス」
本書の最大テーマは「高レベル廃棄物の処分は
人間には不可能」という結論にある。
日本の地層処分場は決まっておらず、著者は
「今後も絶対に決定しない」と断言する。
「あとがき」の一節を紹介しておきたい。
「日本政府は、大量発生する『行方の決まらない
使用済み核燃料および高レベル放射性廃棄物』の
最終処分場の地名を答えずに、どのような理由か
ら原発再稼働を認めるのか、その具体的理由をま
ったく答えていない。
国民と報道機関は、自分の生命と生活を守るた
めに、政府に対してこの問題を追及するべきなの
だ。…(略)…この問題に敵と味方はない。原子
力を放棄する決断が迫られている」
(滝川 康治)
(写真)アッセの“核のゴミ”投棄現場
(本書132~133ページ)
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