漁業が盛んな寿都町が文献調査の「応募検討」~北海道は「条例遵守」を要請
- 2020/08/14
- 19:17

NUMOが描く処分事業の道筋
「また北海道に“原発マネー”を当てにする町が現れたか…」と、情けない気持ちになった。
人口2900、漁業を基幹産業にする後志管内寿都町が、“核のゴミ”最終処分場に向けた
「文献調査」に応募することを検討中--との新聞報道に対する感想である。
幌延町に「貯蔵工学センター計画」が急浮上した36年前のことを知る者からみると、
道民の反応はどこか覚めている感じがする。
高知県東洋町では13年前、この「文献調査」に応募したが、
住民や県などの反対を受けて撤回した。
それ以来、全国的な候補地調査に進展はない。
町が手を挙げても、すんなり事が運ぶとは思えない。
紆余曲折の末、いずれ「誘致断念」に至るだろう。
20億円の交付金に魅せられて…

・町は19年度からエネルギー政策に関する勉強会を開催。6月からは毎月、
NUMO(原子力発電環境整備機構)による勉強会も続けてきた。
・「文献調査」受け入れに伴う、最大20億円の交付金による財政改善を期待する
・町内の各界代表による意見交換会(非公開)を今月26日に開催する
・片岡春雄町長は取材に対し、9月中旬までに方針を決めたい旨を表明。
「合意があれば突っ込んで話をしていく価値はある」と話す。
というのが、新聞報道などの骨子である。
上記の勉強会などの動きは、市民グループ「後志・原発とエネルギーを考える会」
の関係者にも伝わった。それを受ける形で8月13日、報道されるに至った。
※関係記事はこちらから↓
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/450275
また本日(14日)午後には、土屋俊亮副知事らが寿都町役場を訪れ、
片岡町長に対して応募の「取りやめ」を要請した。
道条例で「特定(高レベル)放射性廃棄物の持ち込みは受け入れがたい」
としているので、当然の行動である。
町長は「応募を検討する考えを変える気はない」と答えたという(夕方のNHKニュース)。
※補足:15日付『北海道新聞』によると、土屋副知事は「町に文献調査の応募を取りやめるよう求めるといった
具体的な要求はしなかった」とある。
“核のゴミ”問題をめぐる最近の道のスタンスからは、
こちらのほうが真相に近いように思う。15日午前、ブログ記事のタイトルも変更した。
住民グループは「後志全体で動いていく」
カキやホタテ、ホッケなどの漁業が盛んな寿都町は、
近隣のニセコ町にアンテナショップを開設するなど、地場産業の育成に熱心な自治体だという。
1989年には、全国の自治体では初めて独自の風力発電事業を始めている。
今では年間数億円の売電収入があると聞く。洋上発電の道も模索してきた。

岩内町議の佐藤英行さん
「後志・原発とエネルギーを考える会」のリーダーで岩内町議の佐藤英行さんは、
今回の動きについてこう話す。
「寿都は、漁業や風力発電に熱心で、やり手の町といえるでしょう。
『文献調査』の話は、昨年あたりから動きが始まったようだ。
洋上発電の勉強会をするなどNUMOが入り込みやすかったのではないか」
泊原発の再稼働問題では、後志管内の自治体の多くが、
「周辺町村の意見も聞くべき」としているのに対し、
「4町村(泊・神恵内・共和・岩内)で判断すればいい」との見解だったとのこと。
そのあたりも“核のゴミ”処分調査に色気を示す背景にあるのかもしれない。
「考える会」では近く会合を持ち、今後の対応策を話し合う。
「寿都から黒松内、噴火湾にかけて伸びる活断層の問題も抱えている。
今後は後志全体で動いていくことになります」(佐藤さん)。
“原発マネー”に魅せられた町がどんな道を歩んでいくのか、目が離せない。
(滝川 康治)
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